朝、会社に着いてまず数字を確かめるという社長は多いと思います。昨日の売上はどうだったか、広告費は使いすぎていないか、入金は予定どおり動いているか、在庫は切らしていないか。ひとつずつ確かめようとすると、会計ソフトを開き、広告の管理画面に移り、銀行のサイトにログインし、担当者から届いた在庫の表を探し、といった具合に、いくつもの画面や報告を行き来することになります。仮に、その数が7つだったとします(ここでの数字は、朝の様子を思い浮かべていただくための例です)。
やっかいなのは、それぞれの数字が別の場所に、別の見た目で置かれていることです。会計ソフトの画面と、広告の管理画面と、担当者が作った表とでは、並び方も、期間の区切りも、更新のタイミングもばらばらです。頭の中でそれらをつなぎ合わせ、「昨日はよかったのか、まずかったのか」を見きわめるまでに、思いのほか手間がかかります。
しかも、この確認は毎朝くり返されます。数字そのものはどこかに必ずあるのに、それを集めて見比べる作業だけで、朝のいちばん頭が動く時間が少しずつ削られていきます。読み終える頃には、全体はなんとなくつかめたけれど、では今日まず何に手を打つべきか、と問われるとすぐには出てこない。そんな朝も少なくないのではないでしょうか。
ここで一度、立ち止まって考えてみたいことがあります。社長が朝に本当に知りたいのは、きれいに並んだグラフでしょうか。おそらくそうではありません。知りたいのは、「今日、何を決めるべきか」のはずです。数字は、その判断にたどり着くための材料にすぎません。
経営数字の自動化と聞くと、多くの方は「見やすいダッシュボードを作る」場面を思い浮かべます。たしかにグラフが整うと気持ちはよいのですが、画面がひとつ増えたところで、散らばった数字から論点を拾い直す作業そのものは、社長の手元に残ったままです。減らしたいのは「数字を集める時間」ではなく、この「拾い直す作業」のほうです。
もうひとつ、見えにくい負担があります。数字を上げてくる担当者ごとに、報告の粒度がそろっていないことです。ある人は前年比まで添えてくれるのに、別の人は数字を並べるだけ。ある表は税抜きで、別の表は税込み。速報の値と、締めたあとの確定値が、同じ顔で並んでいることもあります。この「そろっていなさ」を頭の中でならし直す手間が、毎朝じわじわと効いてきます。
数字はあるのに、論点がない。この状態が続くと、社長は数字を眺めることには時間を使っているのに、肝心の「今日の一手」を決める前に、朝の集中が細切れになってしまいます。ここを取り違えて画面だけを増やすと、便利そうなのに忙しさは変わらない、ということが起こりがちです。
ですから、AIに最初にやってもらうとよいのは、グラフを増やすことではなく、散らばった数字を読んで「今日の論点」に変えることです。イメージとしては、社長のための朝刊を1枚、毎朝お届けするような形です。
その朝刊には、大きく4つを載せます。ひとつめは、今日の結論。昨日までの数字を踏まえて、まず目を向けるべきことを短い言葉で。ふたつめは、いつもと違う動きをした数字と、その原因の見立て。みっつめは、社長から誰かに一声かけたほうがよい確認依頼。よっつめは、判断の材料になるメモです。数字の一覧ではなく、判断の順番に並べておくところが肝心です。
たとえば「売上は伸びているが、広告の費用対効果が目安を超えている。承認を続けるかどうか、今日中に決めたい」「大口の入金が二営業日遅れており、今週末の支払いに影響するかもしれない」といったかたちです(ここに挙げた数字や状況は、イメージのための例です)。こう書かれていれば、社長は数字を一から読み解く前に、今日は何を決めればよいかがわかります。
ここで大切な約束がひとつあります。それは、原因を決めつけないことです。いつもと違う数字を見つけたとき、AIはつい「原因はこれです」と言い切りたがりますが、経営の数字でそれをやると危うい。ですから朝刊では、「広告費が上がった主な要因は、着地ページの反応が落ちたことかもしれません。まずは広告の担当者に確認するのがよさそうです」というように、根拠と、見立てと、確認先を分けて書きます。断定ではなく、「たぶんこうで、確かめるならここ」という形にとどめておく。これだけで、数字を鵜呑みにして動いてしまう失敗を、ずいぶん減らせます。
いつもと違う数字については、気になったところをその場でもう一段掘れるようにしておくと安心です。「なぜこの数字が引っかかったのか」を、元になった小さなグラフや内訳までさかのぼって確かめられる。朝刊はあくまで入り口で、詳しく見たいときには裏に材料が控えている、という作りにしておきます。
はじめから全部をつなごうとしなくて大丈夫です。むしろ、いきなり広げないほうが、結果としてうまくいきます。おすすめしているのは、最初の一週間を「毎朝見る数字を選ぶ期間」に充てることです。
やることは、ひとつだけです。売上、粗利、広告費、入金、支払い予定、在庫、商談、解約、問い合わせ、採用と挙げていくと、見たい数字はいくらでも出てきます。そこから、社長がその日の判断に本当に使うものだけを、10個以内に絞ります。網羅しようとするほど、朝刊は読まれなくなります。まずは10個。足りなければ後から足せます。
そのうえで、いくつかの約束を決めておくと安心です。ひとつ、速報の値と、締めたあとの確定値を、はっきり分けて示すこと。朝の数字はまだ動くものだと最初に決めておけば、速報を確定と思い込んで動いてしまう事故を防げます。ふたつ、細かい元データは朝刊に詰め込まず、見たいときにたどれる場所へリンクしておくこと。本文は判断に必要なところだけに絞ります。みっつ、社長が朝に気になった論点を、その都度ひかえておくこと。「今日はこの数字が気になった」という記録が、翌週からの朝刊をその会社らしくしていきます。
この進め方なら、大きな失敗が起きにくく、しかも一週間ごとに手ごたえを確かめられます。使いはじめは、上がってくる数字が多すぎたり、逆に物足りなかったりするかもしれません。けれど、社長が「これは毎朝見たい」「これは月に一度でよい」と判断を重ねるほど、朝刊は御社の意思決定のかたちに寄っていきます。もし合わなければ、いつでも元のやり方に戻せます。
社長の朝は、決めるべきことを決めるための時間であってほしいと思います。いくつもの画面を行き来して数字を集める作業は、その大切な時間を、気づかないうちに少しずつ削っています。AIにできるのは、その手前の「集めて、読んで、論点にする」ところを引き受けて、社長の手元に判断が必要なものだけを残すことです。派手な仕組みではありませんが、毎朝の景色を静かに変えてくれます。
そしてこれは、社長おひとりのためだけの話ではありません。今日の論点と確認依頼が朝いちばんに整っていれば、担当者への一声も早くなり、打ち手が一日ぶん前倒しになります。社長の朝を軽くすることは、まわりまわって、会社全体の動きを一歩速くすることにつながります。
実際に、散らばった数字が1枚の朝刊にまとまり、今日の結論と、気になる数字と、確認依頼が並んでいく様子は、デモ画面でひと通りご覧いただけます。数字が集まり、AIが論点に変え、社長が判断する範囲まで、順番に動く形で確かめられます。
もし御社でも同じことができそうか気になったら、いちど一緒に、社長が毎朝見ている数字を書き出すところから始められます。「何から手をつければよいか分からない」という段階でも構いません。御社の実際の数字に即して、どれを朝刊に載せ、どれを裏に回せそうかを、具体的にお話しできればと思います。